生態
本州、四国の落葉広葉樹林(ブナ林)を中心に生息しています。ツキノワグマといえば胸の白い月の輪模様が特徴ですが、この模様は個体によって異なるため、個体識別に用いることができます。体格は一般的にオスの方が大きいです。食性は植物質中心の雑食性で、春は新芽などの植物類、夏はアリやハチなどの昆虫類、秋にはドングリなどの堅果や木の実などを多く採食します。樹上で木の実を採食する際に、枝を折り敷いて大きな鳥の巣のように積み重ねることがあり、これを「クマ棚」と呼びます。寒さが厳しく食べ物も少ない冬は、大木の樹洞や岩穴などで冬眠します。夏に交尾した後、秋に十分な栄養を蓄えることのできたメスは、この冬眠中に出産や子育てをします。通常、動物は交尾後すみやかに受精卵が子宮内で着床して胎児が成長していきますが、ツキノワグマやヒグマでは冬眠開始前後までの間着床せず、受精卵は子宮内で休眠します。これを「着床遅延」といい、交尾はしたものの子育てに十分な栄養を得られなかったメスが、未発達の受精卵で流産することで、成長した子を流産して体力を消耗するリスクを避けることができます。また栄養不足で最終的に子育てが失敗してしまうという、その間の無駄なエネルギー投資を回避するという利点もあります。ドングリなどの堅果は年によって凶作になることがあり、ツキノワグマやヒグマのこの仕組みは、こうした自然環境に上手に適応しているものと考えられます。