令和7年4月も、たくさんのご支援ありがとうございました。
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4月の動物たちの診療についてお知らせいたします。
4月は野生動物の保護が2件つづきました。また3月に続いて、蹄をケガしたシタツンガのオス“チャチャマル”の麻酔下での処置や、交通事故で保護されたニホンカモシカの外傷処置を継続しました。新たにアカカンガルーのオス“ハート”の脱毛の原因を調べるために麻酔下で皮膚検査と健診などを行っています。
4月初旬には、ホンドテンのメス“きい”に食欲不振や嘔吐などの症状があり、治療を開始しましたが、数日たっても回復の兆しが見えず、麻酔下で精査をすることになりました。体への負担を考えると、体調不良の個体への麻酔はできるだけ避けたいのですが、検査しないと原因もわからないという悪循環に陥ります。麻酔には細心の注意を払い最短時間で処置を終わらすよう、事前の準備に時間をかけます。処置は予定通り終わり無事に目を覚ましてくれましたが、体重が大分落ちていて腹腔内には触知可能な固い腫瘤があることがわかりました。血液検査では顕著な脱水や高血糖が見られ、その場でできる限りの治療をしましたが、残念ながら状態が回復すること亡くなってしまいました。小腸や膵臓の異常であることは推測できましたが、それが正しかったかどうかや治療が最善だったかは、病理検査の結果を待って改めて振り返りたいと思っています。ホンドテンは身近な野生動物ですが、キツネやタヌキよりも出会うことが少ない動物です。冬場の真黄色の美しい毛並みは、偶然出会ったときには思わず目を奪われます。“きい”はそんなホンドテンの魅力を多くの人に伝えてくれたと思います。
4月24日に保護されたムササビは、まだ幼獣でしたが尾の2/3以上をなくす大けがをしていました。幸い元気はあったので、人工哺乳をしながら傷の治療をすることになりました。齧歯類の人工哺乳は犬猫用のミルクを代用することができますが、今回はエキゾチックアニマル用のミルクを使用してみました。幼獣の場合は下痢が命取りになることもあるで、人工哺乳に切り替える際は特に下痢にならないように注意します。初めはミルクを薄めてお腹が慣れてきたところで少しずつ濃くしていきます。便の状態を見ながら漢方薬も使用しました。始めの数日は哺乳瓶に吸い付かず苦労しましたが、そのうち注射のシリンジから上手に飲めるようになり、4月末には体重も少しずつ増え始め安心しました。野生で樹上生活を送るムササビは、四肢の膜を広げて滑空するのが特徴ですが、風を受けたり舵取りしたりする尾の役割も重要です。また、寒い日は尾を体に巻き付け毛布代わりにします。尾を失ってしまうと野生で生き残ることは難しくなってしまいます。今回は保護の状況から、ケガの原因は不慮の事故でしたが、自然豊かな岩手では人と野生動物が同じ場所で暮らしているため、生活活動の中でどうしても予期せぬ接触が起きてしまうことがあります。どちらが悪いのではなく、私たちの生活圏の中に動物たちの暮らしもあることを意識し、人も動物も暮らしやすい環境を考えることが大切だと改めて感じました。
今後も医療レベルの向上を目指していきますので、引き続きご支援のほどどうぞよろしくお願いいたします。