たくさんのご支援をいただきありがとうございました。令和5年3月の診療についてご報告いたします。
3月は動物たちの感染症予防について考える月でもありました。3月8日にニホンイノシシたちに豚熱ワクチンの接種を行いました。家畜の豚や野生のイノシシの間で徐々に広がりつつある豚熱は、動物園で暮らすイノシシたちにとっても他人事ではありません。一見動物園は安全なように見えても、野生動物や人がウイルスを運んでしまうこともあるため、ワクチンでしっかり予防する必要があります。オスの“ひろき”は注射のトレーニングが順調で、大好きなご飯を食べている間に投与することができました。一方メスの“やよい”はまだ注射に警戒してしまうため吹矢で投与しました。注射のトレーニングは動物たちがストレスなく治療を受けられるようにするため、日々の飼育管理に取り入れています。
また、3月末に動物園内の林の中で死亡していた野生のハシブトガラスを検査したところ、高病原性鳥インフルエンザに感染していることが判明しました。今シーズンは、動物園の飼育鳥での感染例が例年より多く、警戒を強めている最中でした。ZOOMO の敷地内には多くの野鳥や野生動物が暮らしており、自然豊かな一方で、飼育動物と野生動物の距離も近くなります。また、人との距離も近いため、飼育動物-野生動物-人との間で病気をうつし合ったり、ウイルスを拡げたりしたりしないように、しっかり対策を行う必要があります。
飼育鳥たちを高病原性鳥インフルエンザから守るための対策は、まず、ウイルスを持つ渡り鳥が大陸から渡ってくる11月前後には、全ての飼育鳥たちを屋根のある場所に避難させています。これは、野鳥の糞が空から落ちてこないようにするためです。また、フェンスの隙間などから小鳥やネズミなどが侵入しないよう、細かい網目のネットを張ります。さらに、人が知らぬうちにウイルスを運んで広げでしまうことがあるため長靴の消毒がとても大切です。鳥類舎に入る前に消毒槽を2回通過する決まりにして、ウイルスの侵入を防いでいます。
悩みは、ここ数年で高病原性鳥インフルエンザの脅威が増していることで、飼育鳥たちを外に出せない期間も長くなってしまうことです。感染対策を強化しつつも鳥たちにとって良い生活環境を保つことが課題です。新しくなったZOOMOではハクチョウ専用の小屋を建てたり、フラミンゴやエミューの放飼場の一部に屋根を付けたりして少しずつ改善に向けて動いています。
高病原性鳥インフルエンザは養鶏場で大変な被害が出ていますが、動物園も例外ではありません。対策をしなければ、ニワトリも野鳥も動物園の鳥たちも関係なくウイルスは広がってしまいます。人の暮らしにも大きく関わる動物たちの病気は、ワンヘルス(人、動物、環境の健康は相互に関連していて一つであるという考え方)の基で対策を進めることが大切だと考えています。
↓令和5年3月の動物医療費のご支援額や使途についてご報告します。