2023年4月5日にアルパカのメス“モコ”が死亡したことについて、飼育状況や治療の詳細、解剖検査の結果から判明した死因などをご報告いたします。
“モコ”は2013年4月8日生まれで、2016年3月4日に当園に仲間入りしました。正面入口近くのお迎え動物として人気者になり、その後、リニューアル開園後の新たな飼育展示先となる放牧エリアへ2020年12月9日に移動しました。放牧エリアでは同じ獣舎で暮らすウシやラマたちと程よい距離感で過ごし、賑やかな仲間に囲まれながらたくさんのお客様に可愛がっていただきました。
リニューアル開園を控え、これまでの放飼場よりも広く造成された草地放飼場に放飼する前に、工事中に放飼場内に混入する可能性のある鉄くずやゴミなどを飼育職員全員で点検し、動物たちが安全に過ごせるよう準備をしました。
放飼場点検を終え、4月5日にアルパカのメス“モコ”、ラマのメス“ミーチョ”、ヤギのオス“むく”を初めて草地放飼場に放飼しました。久しぶりに出た広い放飼場で青草を夢中で食む様子を確認し、新しい放飼場に問題なく順応しているようでした。また、昼過ぎに確認した際にもそれぞれが草を食んでおり、ひと安心していました。
夕方収容時に放飼場の扉前で“モコ”が座り込んでおり、明らかに普段と違う様子だったため獣医や飼育職員を招集し、“モコ”を獣舎内に収容して治療を開始しましたが、同日20時に亡くなりました。治療経過は下記の通りです。
“モコ”の症状から異物もしくは有毒植物を食べた可能性が高いと考え、治療開始と同時に草地放飼場を再度点検したところ、有毒植物であるアセビを食べた形跡を発見しました。“モコ”はアセビ中毒の可能性が高いと推測されたので、毒素を排出させる治療を進めました。それと同時に、当日同じ放飼場に出ていたラマの“ミーチョ”とヤギの“むく”もアセビを食べたことを疑い、寝室内での様子を注視していましたが当日は異常ありませんでした。
“モコ”が亡くなった翌日の4月6日昼前にラマの“ミーチョ”が“モコ”と同じ症状になり、“モコ”と同様の治療をしたところ幸いにも翌日の7日からは回復傾向にあります。また、ヤギの“むく”には現在も症状はありません。
新しい草地放飼場の点検をしたにも関わらず、造成時に強剪定され幹の根元から新芽が出ているアセビを見落としてしまったことが原因で動物の死亡や体調不良となってしまったことを深く反省しています。
リニューアル開園と新しい草地放飼場で元気に過ごしている“モコ”に会えることを楽しみにして下さっていた方も多いと思います。開園直前に非常に悲しいお知らせをすることとなり、大変申し訳ございません。今後このようなことが二度と起こらぬよう、動物の健康と安全に最大限に配慮して参ります。
【アルパカ“モコ”の経過と治療】
4月5日
16:10…放牧場で座り込んでいる状態で発見
16:30…血液検査、静脈点滴を開始、中毒を疑い吸着剤(活性炭)を経口投与
18:30…神経症状が見られ、抗痙攣(けいれん)薬を投与。しばらくしてやや落ち着く
19:20…呼吸状態が悪化し、酸素吸入開始
20:00…状態戻らず、蘇生を試みるも死亡を確認
4月6日
解剖検査を実施。胃からアセビの葉が数枚見つかったことから、アセビ中毒により死亡したと推定(後日、病理組織検査を実施予定)
【ラマ“ミーチョ”の経過と治療】
4月6日
11:40…寝室内で座り込み、沈鬱な表情、嘔吐あり
12:20…血液検査、カテーテルによる胃液排出処置、静脈点滴開始
13:00…吸着剤(活性炭)を経口投与、少し震えあり
13:40…保温開始
17:00…流涎(よだれ)あり。再度吸着剤の経口投与
4月7日
9:15…昨日より反応が良い
9:40…流涎はなくなる。静脈点滴開始、吸着剤の経口投与
14:00…状態は徐々に良化傾向
16:00…起立し動きあり。採餌を確認。再度吸着剤の経口投与