盛岡市動物公園ZOOMOでは、アフリカゾウの動物福祉向上を目的として、岩手大学共同研究員(盛岡市派遣)のコーディネートにより、岩手大学研究支援・産学連携センターと協力者の方にご協力いただき、アフリカゾウの自動給餌機を開発しております。
当園では、アフリカゾウのオス「たろう」が2018年に死亡した後、メスの「マオ」が精神的に不安定になり、不眠と食欲不振、常同行動の増加などが見られるようになりました。そこで、給餌方法の変更とヘイネットや丸太の設置、土の搬入等により採食時間を延ばしたり、退屈な時間を減らすための選択肢を増やす取り組みを行ってきました。
アフリカゾウに限らず多くの動物は起きている時間の大半を採食とそれに伴う行動に費やしていますが、動物園では短時間で採餌が終わってしまい、栄養は満たせても採食までのプロセスや行動欲求までは満たすことができていないことが多くあります。
そこで動物園では、飼料をただ与えるのではなく、複数回に分けたり、運動場の各所に隠したり、食べるのに時間がかかるような仕掛けをすることがあります。これらは動物たちが心身ともに健康に暮らすために取り組まれる「環境エンリッチメント」の一環です。
しかし、飼育担当者は一日中動物につきっきりで飼育作業を出来るわけではありません。飼育係が不在の時にも自動で給餌をすることができれば、刺激になるとともに、採食時間を延ばして退屈な時間を減らし、常同行動を減らす等の効果も期待できます。
自動給餌器は、多くの動物園で飼育係が自作で作っている例も少なくありませんが、大学等と連携をすることでより効果的で精度の高い自動給餌器を作ることができると考え、上記機関にご協力をいただき、①採食時間の延長と行動の時間配分を野生に近づけること、②常同行動を減少させること、③行動のレパートリーを増加させることを目的として、自動給餌機の開発を行うこととしました。
今回製作した自動給餌機は、工学的知識の乏しい飼育職員でも容易に製作でき、出来る限り入手しやすい材料で構成された、安価で実用性と汎用性の高い構造になっています。
開発した装置は、設置をしたら終わりではなく、その効果を測定してくことが環境エンリッチメントを行う上では非常に重要であるため、行動観察等による評価についても外部機関と連携して進めていきたいと考えています。
今後,当園で活用した効果の実証などをふまえ,同じような悩みを持つ全国の動物園で活用していただけるように,情報を随時提供していきます。