お知らせ

2026.06.23
重要なお知らせ

アフリカゾウのメス”マオ”の繁殖への取り組みと現在の状況について

盛岡市動物公園では、“マオ”の人工授精による繁殖に向けた取り組みを継続して行っています。
このたび、“マオ”の繁殖生理の状態について新たな知見が得られたため、現在の状況と今後の取り組みについてお知らせいたします。

現在の状況について

“マオ”の定期的なホルモン測定や行動観察を継続しており、発情の兆候は確認されています。しかし、2025年4月以降周期的に卵胞は発育しているものの本来起こるはずの排卵が正常に行われていない可能性が高いことが分かってきました。
現在、ホルモン動態から卵巣内に「黄体嚢腫(おうたいのうしゅ)」が生じている可能性が高いと考えています。黄体嚢腫は、排卵後に退縮するはずの組織が卵巣内に残ることで、正常な発情周期を妨げる状態です。
このため、国内外の専門家と協議を重ねた結果、今月中に発情周期の正常化を目的とした治療を実施する予定です。治療後はホルモン検査や行動観察を継続し、正常な発情周期が回復するかを慎重に確認していきます。

なぜ繁殖に取り組むのか

アフリカゾウは現在、日本国内で13園23頭(オス4頭・メス19頭マルミミゾウ含む)しか飼育されておらず、2013年を最後に繁殖が途絶えています。また、野生個体の導入は国際的な規制により極めて困難な状況にあります。
このまま繁殖が進まなければ、将来的に日本国内でアフリカゾウを飼育・展示し続けることが難しくなることが懸念されています。そのため、国内での繁殖技術の確立は動物園界全体の重要な課題となっています。
当園では、世界的なゾウ繁殖研究の第一人者であるヒルデブラント博士が所属するProGenY社と契約し、日本初となるアフリカゾウの人工授精事業に取り組んでいます。
この取り組みは、日本の動物園におけるアフリカゾウの将来に貢献することを目的としていますが、それだけではありません。
アフリカゾウにとって繁殖や子育ては、本来の生態の中で重要な意味を持つ行動です。野生のメスのアフリカゾウは母系の群れで生活し、出産や子育てを経験しながら長い年月を過ごします。また、繁殖に関わるホルモンの働きは健康維持にも深く関係しており、長期間繁殖しない状態が続くことで生殖器疾患のリスクが高まることが知られています。
私たちは、“マオ”が本来持つ繁殖能力を維持し、健康な状態を長く保つことも重要であると考えています。

人工授精を選択している理由

ゾウの繁殖では自然交配が理想的ですが、日本国内のアフリカゾウは頭数が少なく、個体の移動には安全面や施設面、遺伝的管理など多くの課題があります。
人工授精は、そのような課題を補いながら繁殖の可能性を広げる方法の一つです。また、今回得られる知見や技術は、今後の自然交配や人工授精による繁殖計画にも役立つことが期待されています。
当園では2006年から岐阜大学との共同研究として“マオ”の繁殖生理を継続的に調査してきました。ホルモン測定や行動観察により発情周期や排卵日を高い精度で把握できており、これらの研究成果が今回の人工授精事業の基盤となっています。

今後について

今後は治療後の経過を観察し、正常な発情周期が回復するかを確認したうえで、人工授精の実施について検討していきます。
なお、現在の人工授精事業は、妊娠が確認された時点、または契約に定められた4回、もしくは4年(2027年の6月まで)の期間の終了をもって一区切りとなります。
当園ではこれからも“マオ”の健康と福祉を第一に考えながら、日本の動物園におけるゾウの繁殖と保全に貢献できるよう取り組んでまいります。
引き続き、温かく見守っていただけますようお願いいたします。