お知らせ

2025.03.01
おしらせ

令和7年1月 動物医療費のご支援についてのご報告とお礼

令和7年1月も、たくさんのご支援ありがとうございました。

1月の動物たちの診療についてお知らせいたします。

 

年が明けてからは比較的落ち着いた日々が続いています。

吐き戻しの症状のあるラマのオス“アオイ”は採食時間を長くしたり少量ずつこまめに給餌したりする工夫をしながらですが、吐き戻しの頻度はぐんと減って落ち着いて過ごしています。

カンガルー病疑いのアカカンガルーのオス“秋田君”の顔の腫れは落ち着きましたが、同居のオス“レイ”の眼が腫れてしまい目薬での治療を行っています。“レイ”眼圧の上昇を疑っています。なかなかおとなしく目薬をさせてはくれないので、香水用のスプレーに目薬を入れて吹き付けるなど工夫をこらしています。

 

1月の大きなイベントとしてアフリカゾウのメス“マオ”の人工授精がありました。昨年の7月に国内で初めて行った施術でしたが、残念ながら妊娠にはいたりませんでした。そこで、1月に再度ドイツから専門家を招き2回目の人工授精に挑戦しました。ドイツからの専門家チームは4日間滞在し、1日に2回も3回もホルモンの測定を行ったり、エコー検査を行ったりしながら慎重に授精のタイミングを計り、1月24日の朝5時から人工授精が行われました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人工授精中のアフリカゾウのメス“マオ”

 

アフリカゾウの人工授精は、日本の動物園のアフリカゾウの個体群の維持に寄与することはもちろんのこと、世界中のアフリカゾウの保全にもつながります。体の大きな大人のオスゾウを繁殖のために移動させることは困難ですが、人工授精では採取した精子を使用するため、オスを野生に残したまま野生由来の遺伝子を飼育下の個体群に導入することができます。このことは、飼育下のアフリカゾウの遺伝的多様性を維持するうえで非常に有用です。

動物園で野生由来の遺伝子を維持することができれば、万が一将来的に野生のアフリカゾウの絶滅が迫った場合に、飼育下のアフリカゾウの遺伝子を野生に還元することも可能になります。このような意味で、人工授精は飼育下の個体群と野生の個体群双方にとってメリットがあります。

 

また、当園で大切にしている動物の福祉の観点からも、1度妊娠出産を経験したメスは生殖器疾患になりにくいこと、子育て中のメスは飼育下の環境でもひまを持て余してしまうこともなくなり、本来の行動に近い行動を維持できるなど、たくさんのメリットがあります。

まだまだ“マオ”はお母さんになるための第1歩を踏み出したかどうかというところですが、無事に出産までたどり着けるよう、まずは今度こそ妊娠するようケアに励んでまいります。

 

交通事故で保護されたニホンカモシカは食欲に若干のムラがありますが、イチイはすごい勢いで食べており、便状もだいぶ改善しました。キズの状態は停滞してしまっているので、別のアプローチも含めて検討中です。

病院チーム 松原ゆき・滝本明佳・早川温子・辻本恒徳

 

令和7年1月 動物医療費のご支援についてのご報告とお礼