お知らせ

2024.08.12
重要なお知らせ

ホンドギツネ“がんづき”の死亡について

当園で飼育していましたホンドギツネのオス“がんづき”が2024年8月5日(月)に死亡しました。“がんづき”は2014年4月12日に盛岡市動物公園ZOOMOで生まれ、今年で10才でした。これまで10年にわたり多くのファンの方々に愛され過ごしてきた経緯もあり、今回死亡までの経緯についてご報告をさせていただきます。

 

飼育経緯

飼育係の前だと特に警戒心が強く木の下や雑草の陰に隠れていることが多かった“がんづき”ですが、お客様の前では台の上で昼寝をしたり、穴を掘ったり、共に暮らすオスの“はっさく”とじゃれついたり、頂いた果物をがつがつ食べたりと、様々な姿を見せていました。また、「はっさくマラソン」でお馴染みの同居個体の“はっさく”が放飼場をせっせと走り回る姿とは対照的に、“がんづき”が台の上に座りクールな眼差しでその様子を眺めている姿がとても印象的な個体でした。

 

体調と経過

2024年7月14日の朝、放飼場に出たところ、右後肢をかばって歩く動作や腰に力が入らずふらつく様子が見られ、痛み止めと炎症を抑える薬の投与を行いました。投薬治療を始めてから一週間ほどで症状はだいぶ改善されましたが、時々腰がふらつき上手く歩けないことがあり、腰のヘルニアを疑いながら薬を切り替えて治療を行っていました。3日ほどして症状は大きく改善され、放飼場で軽快に歩く姿が見られました。元気と食欲は発症してからも変わらずあり、投薬治療による経過は順調のように見えました。

しかし7月27日の朝より突如として下半身に麻痺がみられ、後肢を後ろに投げ出し引きずるような状態となりました。早急に注射治療を行い、安静にするためしばらくの間放飼を中止しました。精密検査のため7月30日に岩手大学付属動物病院でCT検査を行ったところ、ヘルニアではなく腰椎(背骨)の腫瘍が神経を圧迫し、下半身の麻痺が起きていることが判明しました。複数の獣医師の見解により手術をして治癒するものではないという結論に至ったため、今後は腫瘍による痛みを緩和することや状態に合わせて飼育環境を整えることが課題となりました。

検査後の“がんづき”は下半身の麻痺による影響でだんだんと自力で排尿することが難しくなり、毎日排尿の介助が必要な状態でした。後肢には引きずった際の傷が見られました。また、元気と食欲も衰退していたため、早々に飼育チームと病院チームで “がんづき”にとっての幸せを最優先に考えながら、今後の治療やケア、飼育環境の工夫・改善に関する方針を話し合い、飼育環境を改善する準備を進めていました。

こうした中、8月4日は特に状態が変わらない様子で、 “がんづき”が足を引きずっても痛くないように床に麻袋を敷き詰めるなどの対応をして帰りました。しかし翌日、8月5日(月)の朝、残念ながら寝室の巣箱の中で死亡しているところを確認しました。暴れた様子はなく、巣箱の中で眠るように亡くなったと推察されました。

野生のホンドギツネの寿命は5、6年ですが、“がんづき”は10才と長生きしました。これまでに“がんづき”はホンドギツネの魅力や、身近な野生動物だからこそ大切な存在であることを多くの人に伝えてくれました。

死因については、症状が出始めてから背骨の腫瘍と判明し、その後死亡するまでの経過が速く、解剖検査では黄疸などの症状も見られたことから、全身状態が悪化していたことが推測されます。詳しい死因については、岩手大学病理学研究室に病理組織検査をお願いし、今後検査を進めていく予定です。

 

2024年8月12日

盛岡市動物公園ZOOMO

ホンドギツネ担当・獣医