11月もたくさんのご支援をいただきありがとうございました。11月も引き続き、アカカンガルーのオス“秋田君”のカンガルー病(細菌感染により顔の腫れや骨炎症が起こる病気の通称)の治療や、後肢麻痺のトウホクノウサギのメス“れんげ”のリハビリを継続しています。また、フラミンゴたちの健康チェックのため、全頭の体重測定と、水かきに異常がないかの確認などを行いました。また、残念ながらニホンリスの“№315”と“№297”が死亡し原因精査を行っています。
嬉しいニュースとしては、11月14日にキリンのオス“カナト”がよこはま動物園ズーラシアより新たにZOOMOの仲間になりました。今回はその裏話をしたいと思います。“カナト”は本来9月に来園予定でしたが一度目は輸送箱に入らず延期となり、今回は2度目のチャレンジとなりました。 “カナト”の移動は動物輸送専門の業者が行うのですが、迎え入れる側として万が一に備え同行し、万全を期しました。前日の11月13日、飼育スタッフと獣医の私で横浜に車で向かいました。車には、輸送中に万が一の事態が起きた時に使う道具や薬をのせました。聴診器や点滴、蘇生薬、誤嚥を防ぐためによだれを取り除ためのタオルやガーゼ、器具などです。しかし、実際のところ体の大きなキリンが輸送中に自力で立てなくなってしまった場合、立たせるためにはクレーンや特殊な道具を使い吊り上げる必要があります。そのため、私たちが“カナト”に出来ることは、移動中の“カナト”の様子をよく観察し、最悪の事態を回避することです。プレッシャーを感じながらも、何かあった時に出来る限りの対処をして救命ができるよう準備をして向かいます。
輸送当日、ズーラシアで朝から輸送箱へ入れる作業開始です。私たちは“カナト”に警戒されないように少し離れた場所で待機します。前回は輸送箱に入らなかったため緊張感は高まります。ズーラシアのスタッフからの無線が入りました。 “カナト”が輸送箱に入った知らせです。みんな笑顔です。その後、輸送中寒くないように輸送箱をシートで覆い大型のトラックに載せられ、経験豊富な動物輸送業者さんの運転で盛岡に向かいます。私たちは“カナト”のトラックのすぐ後ろを走ります。キリンを載せたトラックが横浜ベイブリッジや首都高速を走り抜ける光景は一生忘れることはないでしょうが、そうこうしているうちにどんどん北上し寒さが増してきます。途中何度かサービスエリアに寄り、“カナト”の健康状態を直接観察しました。輸送中も落ち着いてごはんをよく食べているようで、見るたびに“お弁当”(輸送時は送る側がその動物が好きな食べ物をお弁当に持たせることが多いです)を完食していました。よく食べていたこともあり寒さによる震えもみれられずとても順調でした。
盛岡に到着したのは日付も変わるころでしたが、ZOOMOのスタッフみんなが“カナト”の到着を待っていました。到着は夜間になることは想定していましたので、盛岡で到着を待つスタッフは何度も作業手順を確認し“カナト”を迎え入れる準備をしました。寝室に無事に“カナト”が入るまで気は抜けません。輸送箱を寝室の横に付け扉を開ける作業は、みんなで声を掛け合い行います。ZOOMOのチームワークはこれまで何度も行ってきたキリンの輸送経験でできあがっています。“カナト”はやや疲れた表情もありましたが、無事に寝室に移動してくれました。その晩は飼育スタッフが泊まり込みで“カナト”の状態を観察しました。 “カナト”が盛岡に来てよかったと思えるように心身共に健康になるように気を付けていこうと思います。
動物たちの診療については今後も引き続きご報告いたします。また、これからも医療レベルの向上を目指していきますので、ご支援をどうぞよろしくお願いいたします。